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研究の興味

  • 人間と野生動物の"はざま"の領域に興味があります。

  • 景観生態学的アプローチを用いて、野生哺乳類の都市生態学・獣害対策に関する研究をおこなってきました。

  • 学位取得後は、生物多様性情報を活用したマクロ生態学研究もはじめました。

  • その後、東京都心部を中心にタヌキの生態研究をおこなっています。

  • 最近は、山形県の自然を活かした野生動物の研究も始めました。

都市化と野生哺乳類の関係 | 主な研究期間:2006年~継続中

森林の分断化とノウサギの分布

    都市化による景観変化がノウサギの分布に与える影響を評価しました。その結果、ノウサギが分布するためには周辺森林面積が多い方がよいということが分かりました。また、ノウサギの分布は景観変化に対してすぐに反応することも明らかになりました。開発などにより森林が減少するとノウサギはすぐにいなくなってしまうと考えられます。ただし、森林の分断化のプロセスによっては履歴効果が働き、森林減少後も数十年にわたり個体群が維持される可能性も示唆されました。森林がバラバラになるような分断化よりも、一部の森林がまとまって残る分断化のほうがノウサギの生息にとっては都合が良いようです。

      関連業績:Saito and Koike (2009) Acta Theriol; Saito et al. (2016) J Mammal

都市化傾度と中大型哺乳類の分布

    意外なことに、都市化傾度に沿って哺乳類群集の変化を定量的に示すような研究は、これまでほとんどおこなわれてきませんでした。そこで、都市から森林に至る景観傾度に沿った中・大型哺乳類の分布を網羅的かつ定量的に解析し、都市化傾度に対する哺乳類の出現パターンとその空間スケールを明らかにしました。出現パターンと重要な空間スケールは種によって異なる結果が得られました。
    また、中・大型哺乳類が都市に適応するために必要な生態特性を定量的に解析しました。その結果、年あたりの産仔数が多く、雑食性である種が都市景観に適応的であることが示されました。都市化が進行していくと、まず産仔数の少ない種が消失し、その後に草食性の種が消失することも示唆されました。

      関連業績:Saito and Koike (2013) PLoS ONE; Saito and Koike (2015) Acta Oecol

周辺景観と疥癬タヌキの関係

    センサーカメラによる調査をおこなっていると、毛が抜けている個体がしばしば写ります。これは疥癬に罹って毛が抜けてしまった個体であると推察されます。この特性を利用して、市街地から郊外に設置したセンサーカメラに写ったタヌキに疥癬と思われる症状があるかどうかを調べ、都市化との関係を解析しました。その結果、周辺に森林が少ない景観(≒都市景観)ではやや疥癬の罹患率が高い傾向が示されました。疥癬は接触感染が多いことが知られており、森林の少ない景観ではそのような機会が増える可能性が示唆されました。

      関連業績:Saito and Sonoda (2017) EcoHealth

都会に暮らすタヌキの生態

    さまざまな方の協力を得ながら、東京都心部に生息するタヌキの生態について調べています。成果が出ましたらご報告します。

      関連業績:鋭意準備中

生物多様性情報を活用したマクロ生態学 | 主な研究期間:2011年~継続中

大型哺乳類の分布解析

    日本全国を対象に、大型哺乳類5種(ニホンジカ、イノシシ、カモシカ、ニホンザル、ツキノワグマ)の分布モデルを構築し、分布要因の解明と将来の分布予測をおこないました。現在の環境が維持された場合と環境変動シナリオを考慮した場合の将来予測結果を比較しましたが、いずれにおいても分布は拡大することが示唆されました。

      関連業績:Saito et al. (2016) Int J Geogr Inf Sci

植物の分布に対する土地利用の貢献

    環境省の植生調査結果を用いて、植物の分布に対する土地利用の貢献に調べました。その結果、気候要因が最も重要であるものの、土地利用も一定の割合で重要であることが示唆されました。とくに、広域に分布する種では土地利用の寄与が相対的に大きい傾向にありました。

      関連業績:Saito et al. (2015) Plant Ecol Divers

外来蝶アカボシゴマダラの潜在的生息適地

    外来蝶であるアカボシゴマダラの潜在的な生息適地を、原産地である中国の標本情報と食草であるエノキ属植物の分布情報から推定しました。その結果、日本の広範囲が生息適地であることが示唆されました。今後のさらなる分布拡大が懸念されます。

      関連業績:斎藤ほか(2014)蝶と蛾

気候温暖化とクマゼミの分布北上

    気候温暖化とクマゼミの分布北上の関係がしばしば取りざたされますが、実際にはあまり関係ないのではないかとの指摘もあります。そこで、クマゼミの分布と気候の関係を分布解析によって調べ、温暖化が分布拡大に寄与しているかどうか検討しました。その結果、現在の分布よりもう少し北方にも分布適地が推定されたことから、クマゼミの分布は平衡状態に達していない可能性が示されました。つまり、温暖化が生じなくても、分布の北上が起こる可能性が示唆されました。

      関連業績:Saito et al. (2016) Clim Res

チョウ類の食餌リスト

    生物多様性情報を有効に活用するためには、使いやすいように整備されていることも重要です。チョウ類における種と餌という種間関係は生態学研究において重要な情報ですが、日本においてはこのような情報は散在しており、使いにくい状態でした。そこで、さまざまな図鑑などの文献から情報を抽出し、標準化したリストの作成をおこないました。そのリストはデータペーパーとして公表されました。

      関連業績:Saito et al. (2016) Ecol Res

イノシシによる農作物被害に関する研究 | 主な研究期間:2007年~2011年

千葉県におけるイノシシの分布拡大予測

    千葉県においてイノシシの分布がどれくらいの速度でどこまで拡大するのか予測しました。さらに、北部における隔離個体群の除去の費用対効果について検討しました。

      関連業績:Saito et al. (2012) Wildl Biol

水稲被害に影響を与える要因

    イノシシによる農作物被害に関係する要因を明らかにしました。このとき、今まで別々に評価されることが多かった環境要因と被害対策の影響を同時に評価しました。人間活動の少ない中山間地で被害が大きくなる傾向がみられ、電気柵や農地周辺の草刈りが被害軽減に効果的であることを示しました。

      関連業績:Saito et al. (2011) Crop Protect

潜在的な水稲被害リスクマップの作成

    千葉県を事例地として、被害地点の位置情報と入手が容易なGISデータを用いて、イノシシによる潜在的な水稲被害リスクマップを作成する方法を提案しました。

      関連業績:Saito et al. (2012) Int J Pest Manage